ヴィルタス・クヮルテットは泣けた

妻と「ヴィルタス・クヮルテット」のリサイタルに行って来た。
素晴らしい演奏、ナマ音の厚みと迫力、ついに3曲目で涙を拭く羽目に。
それくらい深く感動できた、最高の一日だった。
ヴィルタス・クヮルテットは、いわきAliosを拠点にしている弦楽四重奏団。普段は各地で各々の仕事をしている4人の若い演奏家が、年に2回、いわきに集合して演奏を行う形だ。
今回は1週間のリハーサルの合間に、市内の弦楽器習っている子供や大人向けのワークショップ、二つの小学校へ行ってミニ演奏会と多彩な活動をして、最後に今日のリサイタルを行った由。
いまさらながら、いわきに弦楽四重奏団を置く、っていうアイディアの賢さに感心した。

  • お金のかけ方が賢い。オケなんぞ置いたら、たくさんのお金を薄いばらまきにしてしまう。クヮルテットなら、同じお金でも、ある程度手厚いお礼ができるだろう。その分、優れたプレイヤーが呼べる*1
  • 少人数を活かしているのが賢い。小学校へお出かけして演奏会、とか、市民ワークショップなんかは、その機動力の賜物だろう。そうしてファンの裾野が広がっていく。
  • オーディエンスの規模に見合っているのが賢い。いわきの人口規模で大人数の聴衆を集めるのは、かなり無理がある。小ホールでじっくり聴けるクヮルテットなら、席は充分埋まるだろうし、一体感も強くなる。そこへ加えて、地元の優れた楽団とくれば、多少高くたって応援したくなるのが人情というものだ。回を追うごとにファンは増えていくだろうし、わしらの楽団、っていう誇りも強くなっていくだろう。

以下は、今日の感想。素人なりにそのまま書くんで、詳しい方は笑わないでね。

  1. ベートーヴェン弦楽四重奏曲第2番
    ナマ音の鮮烈さのおかげで、発見発見。今まで、初期の曲はモーツァルト色やハイドン色が強くて、何だかパスしていた。ところが、今日、第一楽章の途中に、明らかにベートーヴェン、っていう主題が混ぜ込んである(ちょっと浮き気味だけど)のに気がついた。ははぁ、こいつ実験してるな、と思ったら急に面白くなった。よく聴くと、後の楽章でもそういう部分があるから、やっぱり自分の曲作りのために色々やっていたのだろう。
  2. バルトーク弦楽四重奏曲第4番
    素晴らしい熱演に圧倒された。不協和音炸裂の中に、4人の音がうねり、絡み合って、まるで生き物のように動いていくのがよくわかった。バルトークってヒトは、音源としての弦楽器を本当に良く知っていたんだな。弦の減衰のタイミングまでも計算に入れて、音を積み上げてるんではなかろうか?
    今まで、何だかよー分からんと思っていたけど、これはハマりそうな音楽だ。義父に頼んでCD借りよう。
  3. ベートーヴェン弦楽四重奏曲第9番
    もう何も言えない。トリにふさわしい曲、演奏で、とうとう泣いてしまった。馬渕さんのヴィオラが印象的で、とてもいい感じ。
    よく知っている大好きな曲なのに、目の前で優れたアーティストが演奏すると、こうも違うか。家に帰ってCDで聴き直すとガッカリしそうで怖い。

私は、次も必ず泣きに行く。

*1:事実、優れたメンバーが揃っている。